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4月, 2024の投稿を表示しています

晴耕雨読

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  少しだけ、人生の隙間ができた。 70歳になるのをきっかけに、仕事を半分にして、人にまかせ、そこが私の隙間になった。 働いて当たり前だと思っていた。働かないのは罪悪だとさえ思っていた。 休日というわけでもなく、ただ働かない1日が、急に目の前にあると、何をしていいのかわからない。 晴耕雨読、少し意味は違うかもしれないけど、晴れたら山に登り、身体を鍛え、雨が降ったら本を読んで勉強をする。そして、誰かに呼ばれたら、駆けつけて、役に立つための支度をする。 ささやかな計画がある。この年寄りの医者でも、誰かの役に立つことがあればと、心からそう思う。 図書館が新しい私の居場所になった。本の香りに包まれて、懐かしい本、珍しい本、素晴らしい本に囲まれて、勉強をしよう。美しい思索の森の中で、哲学の散歩をしよう。そして、晴れたら、新しい人たちに出会う準備をして、山に、街に出かけよう。 きっと素晴らしい出会いがあるちがいない。18の年に感じたあの突き抜けるような感動の瞬間が待っている。

新しい診療所に生まれ変わる

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  隈診療所は、33年前の2月6日に開業しました。久留米大学の医局を退局して、実家のすぐそばに、診療所を開設。36才の春、体力、気力、自信に溢れていました。今思えば、いろいろな方にご迷惑をかけたかもしれませんが、とにかく、大きな海を前に、武者震いをする若い漁師のような気持ちでした。 それから33年、隈診療所は新たに生まれ変わろうとしています。 新しい医師、児島将康先生をお迎えして、私も仕事を半分くらいにします。 もちろん山にも登ります。もちろん、在宅医療も今までどおり、24時間、365日で続けてまいりますが、私自身は、もっと、皆さんの中に飛び込んで行きたいと思っています。医療という枠の中では、救われない人たちを沢山見てきました。もっと自分に何かできないか、もっと患者さんと家族を幸せにできないか、地域を幸せにできないか、そんな思いです。 年をとったのではなく、新しく生まれ変わるのだと、自分一人で考えています。

兄の思い出

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  私の兄は28歳で膵臓癌で亡くなった。 都会の大学を出て、銀行に勤め。その後、家業を継いだ兄は、私にとっても。両親にとってもスーパースターだった。頭が良くて、おしゃれで、ユーモアがあり、誰にも優しかった兄は、私が超えられない存在だった。 そんな兄が、夏のある日、大学病院に入院したと、医学部にいた私に、電話がかかってきた。とりあえず、急いで、病院に向かった。 ベッドの上の兄は、いつもと全く違う無精髭を伸ばして、片手を上げた。信じられなかった。大した病気などしてこなかった兄の顔を、まっすぐみれないほど、私は動揺していた。 何を話したかよく覚えていないが、、最後に、兄は、「夜が長いんよ」と力無く言ったことは鮮明に覚えている。 夏の初めから腰痛があり、整形外科に通っていたが、黄疸が出たので、内科に受診して、かなり進行した膵臓癌と診断されたのである。膵臓から腰椎に転移していたらしい、それから数日して、兄は死んだ。 私も衝撃を受けたが、母は、それ以上の衝撃を受け、葬儀の前後、廃人のようになり、寝ついていたが、それから数ヶ月経っても、兄の幻影が、うちから見える亀山公園の階段に見えると話していた。 四つ上の兄は、小さい時から妙に大人びていて、私は子供扱いされたような記憶しかありませんが、弟思いのいい兄だったと記憶しています。 あれから、46年経ちました。 写真の中の兄は、若々しい顔つきをしていますが、私はすっかり歳をとり、今年で70歳になります。あの時、感じた激しい悲しみ、行き場のない怒り、後悔、みんな霧の中に消えてしまいました。 喫茶店の椅子に座り、コーヒーが好きだった兄をふと思い出し、会いたいなと思う私がいます。会って、どんな話をするんでしょう。家業のこと、今の仕事のこと、母のこと、父のこと、姉のこと、家族のこと、私の子供たちのこと、孫のこと、兄と喧嘩をしたこと、そして、最後に話したあの晩のこと 取り返せない時間の記憶の中で、泣きたくなるほど、懐かしい瞬間たち、悲しくて切ないけれど、そんな瞬間をくれたあなたに感謝しています。影があるから、光が素晴らしく見えるんだよね ありがとう、そして、またいつか会えるね、きっと

暇げな風貌

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  がん哲学外来の約 60 分という限られた時間内でなるべく早く信頼関係を築くために、私が心がけていることがあります。それは、「暇げな風貌」、つまり自分を暇そうな雰囲気に見せるのです。忙しそうにしている人間に人は心を開かないでしょう。自分の脇を甘くして、相手につけ入る隙を与え、懐の深さを示す。これが私の心構えです。 (日野興雄 いい覚悟で生きる より)

言葉の処方箋2

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  96歳で亡くなったうちのばあちゃんが、いつも言っていた口癖です 山より大きい獅子は出ん さきゃさきどんが知っとる 人間、馬桶いっぱい飯や食わん 私がよく外来で使う言葉です 楽しんだもの勝ち 夫婦はしょせん他人 悩みや心配はするだけ損、穴掘って埋める 死ぬまでは死なない 死ぬまでは死なない

暇でお節介な医者のいるカフェ

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  たまたま、暇でお節介な医者がカフェにいる。そこにたまたま訪れたお客さんは、実は大きな病気を抱えていた 雑談から、始まって、相手が医者だと知ると、急に、どうしても聞いてみたいことがありますと、ポロッと口にした彼は、捲し立てるように話し始めた。 お節介な医者は、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、かなり長い間、話を聞いてくれた。時折、ぼそっと、そうですね、それはこうかもしれませんねと、答えにはなっていないかもしれないけど、解説めいた言葉をいくつか吐き出し、また後の話を聞き始めた。 長い時間、コーヒーの香りの中で、緩く会話は続いた。 いつしか、彼の頬には、血色が戻り、唇には笑みさえ浮かんでいる。 言葉と言葉が絡み合い、少しだけもつれただけなのに、言葉は薬のような効果を持ち始め出した。 赤いツツジの花びらが、クルクルと回って、4月の水たまりに落ちて行った。 私の妄想です、多分、、、、、

言葉の処方箋

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樋野興夫先生が、がん哲学外来で使われる方法ですが、さまざまな人たちの名言や箴言から、患者さんの心を癒すための言葉をご覧ください 「人生いばらの道、されど宴会」 がん哲学外来ホームページより    https://gantetsugaku.org/kotoba/

がん哲学外来とは何か、カフェとは

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 がん哲学外来とは何か 順天堂大学で病理学の教授をされている、樋野興夫先生が、提唱された言葉です。病理解剖医の先生が、がんの専門医が忙しい日常臨床の中で、がんの患者さんと向き合う時間がないことに憂慮され、2008年に3ヶ月だけ、がん哲学外来を試験的に解説しました。 最初は、何人の患者さんが来るだろうという心配がありましたが、蓋を開けると大盛況で、予約をお断りするような状態になりました。 それほど、ゆっくりと時間をかけて、お茶を飲みながら、心に届く言葉を交わすことで、救われる何かがあるのです。個別相談もあり、カフェのような形式で、数人でお話をすることもあります がんという病気をきっかけに、人生とは何か?生きることの意味、本当に大切なものは何かを考えるきっかけにするという意味が、「がん」と「哲学」を組み合わせた言葉に含まれています。 「がんであっても尊厳をもって人生を生き切ることのできる社会」の実現を目指し、より多くのがん患者が、垣根を越えた様々な方との対話により、「病気であっても、病人ではない」という、安心した人生を送れるように、私たちは寄り添っていきたいと思っています。がん哲学外来ホームページより 現在では全国に広がり、38都道府県、アメリカ、韓国でも開催されています。

大分がん哲学外来ふぐカフェに参加した感想

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  私は内科の開業医です。開業して33年、その間、在宅医療に17年関わってきました。その私が気になっていたのは、樋野興夫先生のなさっている「がん哲学外来」というものです。 大分がん哲学外来ふぐカフェに参加して 大分の緩和ケアをなさっている林先生は以前から存じていましたが、先生が大分で、がん哲学外来をなさっているということを知り、長い間、気になっていました。  ところで、私も、もうすぐ古希を迎えるという年齢になり、偶然にも、私の診療所を手伝ってくれるという奇特な先生がいらっしゃって、4月1日より、仕事を半分に減らすことができました。医師には定年がありませんが、働き方改革も後押しして、ようやく、私の人生にも、時間的なゆとりができたわけです。 といって、趣味のことと言っても限りがあり、贅沢ができるほどのゆとりもありません。私に医療以外の、何ができるのか悩む毎日でした。 そこで、とにかく、いろいろな方にお会いしてみたいと思いました。 ふぐカフェで、患者さんでは泣く、生きている人としての皆さんにお会いして、さまざまなお話を聞かせていただき、私も、自分の人生について、初めての方達に、お話しして、心が透き通っていくような気持ちの良い時間を過ごさせていただきました。誰にも気兼ねせず、心の中を打ち明ける時間。  これが、私の目指しているものかもしれません。こんな場所が、医療と患者さんの隙間を埋める道具なのかもしれないと直感いたしました。 林先生の、お人柄か、ゆっくりと、普通におしゃべりをしながら、話を広げるでもなく、批判もせず、教育するのでも無い、それでいて、熱心に聞いてくれる司会が心地よく、あっという間に時間を過ごすことができました。 何を話していたのかも、よく覚えていませんが、心が洗濯されたような愉快な時間でした。またお世話になりたいと思っています。  そして、できれば、この町で、同じような場所を作れたらと考えております。 その節はありがとうございました。 令和6年3月

参加にあたっての注意

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  参加に当たっての注意 1 .このカフェで話した内容や個人情報はお守り下さい。 2 .各個人の連絡先は、こちらからお知らせしません。各個人の了解の上、     それぞれで連絡先を交換して下さい。 3 .一人の方がお話しされているときには、その方のお話を聴いて下さい。 4.   人の発言を否定しないで下さい。また、上手に話す必要はありません。       しどろもどろでも結構です。他の人は最後まで聴きましょう。 5.  発言はしなくても自由です。聴くだけの参加でも構いません。 6 .途中参加、中途退出も自由です。 7. それぞれの分かち合いは他の方とは比較できません。発言に優劣はありません。       比べないようにしましょう。 8 .何か企画の要望や、お気づきの点は遠慮なくスタッフにお声かけ下さい。 9.  新型コロナウイルスを含む感染症防止の観点から、遵守をお願いする事項が   あります。(リアルカフェ)  ・当日の朝検温をお願いします。来場時にも検温します。 37.5 度以上の方は参加を   お断りする事があります。(会場に非接触型の体温計を準備しています。)  ・会場内ではマスクの着用をお願いします。マスクを着用していない方は   入室をお断りする場合があります。   (会場に個人用のマスクを持参して下さい。)  ・アルコールによる手指消毒をお願いします。   (会場に準備しています。)