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デーケン先生

10数年前に、福岡でアルフォンス・デーケン先生の講演会に出席しました。先生は開講一番、「私はドイツ人でしたが、今は日本人です。最近、ドイツでは畳の上で死ぬことが流行っています。」とかなり無茶なジョークをお話ししてくださり、会場は微妙な含み笑いに包まれました。 当時、すでに上智大学で教鞭をとり、死生学という聞きなれない学問を講義し、死生学の権威であったデーケン先生らしいお話しです。 講演の後、先生の著書 第三の人生という本に、サインをいただいたことも、先生のドイツ人らしい横顔と共に、妙に鮮明に覚えています。 自分も70歳を超えて、ふとその本が気になり、読んでみましたが、あらためて、老人(あえてそう呼びます)の特性について、精密に、そして愛情を持って述べられている名著だと感じました。  ユーモアについて述べている章では、ユーモアとは、「にもかかわらず笑うことだ」と書かれてあります。どんなに悲惨な状態であっても、にもかかわらず笑う、素敵な言葉です。 自分自身に帰って考えるならば、その頃は表面だけ理解していましたが、ようやく、そんなことが身をもって理解できる年になったんだなあとつくづく思う歳になったことを、どこかおかしくも楽しく感じています。

11月開催のお知らせ、遅くなりました(^_^;)

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  がん哲学外来カフェひた鮎カフェは、 がんサバイバーの方や、ご家族、友人、知人の皆さんのための、サロンです。気さくになんでも話してみて、 どなたでも参加できます。 10名限定、予約は必要です。 ※がんサバイバーの方が優先になります。 日時 第二土曜もしくは第三火曜    14時から2時間 第6回 11月9日(土曜) 場所 黎明館 第7回 12月14日(土曜)場所 黎明館 黎明館 ( れいめいかん )   日田市隈町 2 丁目 2-1 要予約 隈診療所 0973-22-0033   詳細は gantetuhita.blogspot.com

ありがとう、ごめんね

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    15年前くらいに、スケートに行って、足の骨を折った。知り合いの整形外科で手術、ボルトを入れてもらった。診察を休むわけにはいかないので、松葉杖をつきながら、外来と老人ホームや在宅の人の往診などを続けていた。 片足が不自由で、妻やスタッフに迷惑をかけ、気がつくと、思わず、ごめんねとか、すまないねとか、謝りの言葉がしょっちゅう出るようになり.そう言ってるうちに、なんだか自分が迷惑をかけるだけの、情けない存在になるような気がしてなりませんでした。 そんな時、妻が、ありがとうって言ったらいいよと言ってくれました、 ありがとうを言葉にすると、目の前にいる人と、対等になれる。そして、その人のことを身近に感じられる。 すみません、ごめんねは、どうも、目を伏せて、逃げている風情だ。その人の顔をじっとまっすぐ見て言う、ありがとうは直球の気持ちだ。今日もみんなにありがとうを言いたい。

ドアノブコメント

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  エンジェルトランペット ドアノブコメントと言う言葉があります。私が医学生だった時、講義に出てきたのですが、簡単に言うと、人の話は最後まで聞かないとわからないということです。 診察室では、たくさんの人が、自分の病状を話してくれるのですが、意外にも診断に大切なポイントを最後まで話せず、診察が終わり、部屋から外に出る間際、ドアノブに手をかけた時に、ふっと大事な事を話してくれることがあります。 「そういえば、なんか黒っぽい便が出たことあります」 消化管出血を疑う大事な兆候です。 もちろん、それを引き出す問診をしていくのが、医師の勤めではありますが、よくお話をしてくれる患者さんほど、沢山の情報の中で埋もれてしまって、方向性がわからなくなることもあります。だからといって、先を急ぎ、送り出すように患者さんを促してしまうといけない、最後まで気が抜けないよという戒めだと思っています。 人の話を聞くという難しさを感じる言葉です。 毎日、診察室では、いろいろな患者さんが、お話をしてくれるので、一生懸命、大切なポイントを逃さないように耳を傾けていますが、それでも医師も人間です、疲れていたり、沢山の患者さんを診察しなければいけない時には、聞き逃したり、大切な一言を逃さないように頑張っているつもりです。 いや、がんばります。 そして最後の一言まで、聞き逃さない覚悟でいます。  ただ、カフェでお話を聞いている私はそれとちょっと違って、お話を楽しんでいることを感じます。医師ではなく、隣人として、心の部分でお話を聞ける楽しさを感じながら接しています。どうぞ、ゆっくり、自分の言葉で、楽しみながらお過ごしください。 もちろん、医学的なコメントがご希望でしたら、喜んでいたしますので、ご遠慮なく 11月のお知らせ   がん哲学外来カフェひた鮎カフェは、 がんサバイバーの方や、ご家族、友人、知人の皆さんのための、サロンです。暇そうな医者に、気さくになんでも話してみて、 どなたでも参加できます。 10名限定、予約は必要です。 ※がんサバイバーの方が優先になります。 日時 第二土曜もしくは第三火曜    14時から2時間 第6回 11月9日(土曜) 場所 黎明館 第7回 12月14日(土曜)場所 黎明館 黎明館 ( れいめいかん )   日田市隈町 2 丁目 2-1 要予約 隈診療所 0973-22-0033

末期がんの患者さんへのお願い

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  末期がんの患者さんに最近お願いしていることがある 貴方にはまだやるべきことが残っています。 若くて、元気に溢れていても、老いて、病に苦しんでいる人も、残された時間は決まっている。 それを嘆いたり、不安に思っていてもどうしようもない。人は生まれた時から、死すべき運命を抱えている。 それならば、今、この時、大切なことは、残された人に、貴方の人生が何だったのかを、記録して、残してやるべきだと思います。ご家族の力を借りてでも、やらなければならない大切なお仕事です。 子供や孫は、貴方の人生の記録を見て、きっと感動することと思う。 人間は生涯に1冊だけ、本を書くことができる。人生という本だ。 この残された時間の中で、写真や記録を確かめながら、子や孫に、貴方の人生の本を残してあげて下さい。 患者さんが一番つらく思うのは、自分にはもう何もできない、何もすることがないということだと感じています。 どうか、この黄金のような貴重な残された時間を、残された家族のために使ってあげてください。大変な作業かもしれませんが、ビデオや写真などを使ってもいいと思います。 楽しみながら、時間をかけてゆっくりやりましょう。

10月のお知らせ

  がん哲学外来カフェひた鮎カフェは、 がんサバイバーの方や、ご家族、友人、知人の皆さんのための、サロンです。暇そうな医者に、気さくになんでも話してみて、 どなたでも参加できます。 10名限定、予約は必要です。 ※がんサバイバーの方が優先になります。 日時 第二土曜もしくは第三火曜    14時から2時間 第5回 10月12日(土曜) 場所 黎明館 第6回 11月9日(土曜) 場所 黎明館 第7回 12月14日(土曜)場所 黎明館 黎明館 ( れいめいかん )   日田市隈町 2 丁目 2-1 要予約 隈診療所 0973-22-0033   詳細は gantetuhita.blogspot.com

在宅医療推進フォーラムin大分に参加して 令和6年9月28日

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  在宅医療推進フォーラム in 大分に参加して 令和 6 年 9 月 28 日     9 月 28 日土曜日 大分のコンパルホールで、在宅医療推進フォーラムが開催されました。 その実行委員会に参加して、私も発表を一題させていただきました。メモ書きをもとに、ご紹介いたします。 学会のテーマは「コンパッション(おもいやり)のある在宅医療・地域をめざして」ということです。 コンパッションとはなじみのない言葉かもしれませんが、大会委員長の山岡先生が、あえて「おもいやり」という言葉に訳されました。 数年前より、アランケレハーという人が提唱した言葉で、その本の副題に「公衆衛生と緩和ケアの融合」と書かれています。ざっくりと説明すると、公衆衛生は、医療や、健康増進などの目標をかかげて、発達してきたが、老化や死の周辺については、触れずに、むしろ避けてきた感さえある。 その反省として、緩和ケアという概念が発達したわけだが、これも高度に専門化されており、一部の専門家の分野になってしまった。いまこそ、地域住民と、医療、介護、行政が同一のフィールドで、コンパッション(思いやり)という言葉のもとに、みんなが努力していくスタイルを確立しようという考えです。   ケレハーの著書を翻訳された慶応大学の堀田先生は、共感という言葉も使っておりました。 認知症は社会的な死であり、喪失の恐怖、孤立、怒りなどがあり、がんサバイバーは死への恐怖、 慢性疾患としてのがん治療、再発の恐怖、経過観察の苦しみなどがあり、死や喪失を、専門職だけに任せてはいけない、地域住民でのコンパッションの共有が重要ともいわれました。 互助力ということにも触れられていました。 地域での実例を挙げて、小さな取り組みでもいいので、ぜひ、行動に移してほしい。 3 人集まればすぐに行動にうつるのがぽいんとだともいわれていました。   次の演題として、私が 8 年間続けた認知症カフェの話をして、堀田先生に「楽しそうにやれているのがよかったです」と評価されて、うれしかったです。たくさんのボランティアスタッフがいてやれることなので、本当に感謝です。 次の演題は、佐伯の山内先生が、地域で行っている「ごちゃまぜカフェ」(認知症も障碍者、就労困難者、すべての人たち)について、話されました。