デーケン先生
10数年前に、福岡でアルフォンス・デーケン先生の講演会に出席しました。先生は開講一番、「私はドイツ人でしたが、今は日本人です。最近、ドイツでは畳の上で死ぬことが流行っています。」とかなり無茶なジョークをお話ししてくださり、会場は微妙な含み笑いに包まれました。 当時、すでに上智大学で教鞭をとり、死生学という聞きなれない学問を講義し、死生学の権威であったデーケン先生らしいお話しです。 講演の後、先生の著書 第三の人生という本に、サインをいただいたことも、先生のドイツ人らしい横顔と共に、妙に鮮明に覚えています。 自分も70歳を超えて、ふとその本が気になり、読んでみましたが、あらためて、老人(あえてそう呼びます)の特性について、精密に、そして愛情を持って述べられている名著だと感じました。 ユーモアについて述べている章では、ユーモアとは、「にもかかわらず笑うことだ」と書かれてあります。どんなに悲惨な状態であっても、にもかかわらず笑う、素敵な言葉です。 自分自身に帰って考えるならば、その頃は表面だけ理解していましたが、ようやく、そんなことが身をもって理解できる年になったんだなあとつくづく思う歳になったことを、どこかおかしくも楽しく感じています。