柴犬くん

 時々出会う柴犬くん



朝の散歩で、時々出会う柴犬くん。

いつも6時半に起きて、犬の散歩に出かけるのだが、時々会う柴犬くんがいる。柴犬は大抵ツンデレで、飼い主以外には馴染まないのだが、その犬は私のほうに近寄り、私が手を出すとその手をクンクン嗅いで。やがてぷいと顔を背ける。

匂いを嗅いで、その犬や人を識別しているのだろうが、どんな匂いを彼は感じ、どんなことを思っているのだろうか?

内科の開業医としてアルコールで、消毒したり、様々な消毒液に手を浸すことがあるが、そんな匂いがするんだろうか。あるいは私の食べ物や様々な分泌物を彼は記録するのだろうか、犬はそうやって、自分の中の名簿を書き換えているのだろう。

不思議なことだが、彼にどんな世界が見えているか聞きたいくらいだ。

固有の情報という意味では、顔や名前体型などが人間なら考えられるが、臭いと言う、いわば無限な感覚世界で記されるのはどんな記録なんだろう。

ひょっとして、警察犬や関税で税関で働く犬たちの強烈な個体識別能力を持つことを考えれば、臭いと言う強力なデータベースは、人間の文化よりも奥深く、魅力的なものかもしれない、とても興味を惹かれる。

そんな妄想にふける私だった。



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