悲しみは治療できない 新聞の記事を読んだ。戦争でトラウマを背負った父親が、30代で母を見送った。その後、アルコール依存症と認知症の診断をうけ、それから90歳で亡くなるまで、娘は壮絶な人生を送った。 憎んでも憎みきれない父親を、或るきっかけから、戦争のトラウマが、彼をそうさせてしまったのではないかと考え、彼の戦歴を調べて、厳しい戦争をくぐり抜けてきたのだと知った。 少し心が和らいだとのことだったが、それだけが救いである。 アルコール依存症、それに至る経緯、つらく悲しい介護の長い毎日を考えると胸が痛む。 医学は認知症や依存症に対して、ある程度の治療を行うことはできるが、その家族たちの悲しみを治療できない。 それは医学の範疇ではないということもできるだろうが、いたたまれない思いでいっぱいになる。 治療すべきは、病気ではなく、その人の痛みや苦しみ、そして悲しみだと思っている変わった医者は私だけでしょうか?