貸し台所

NHKテレビのドキュメント72時間という番組で、中国の貸し台所という番組が放送された。 中郷の江西省に、がん専門病院があり、そこでは、入院患者はどうも家族が食事を手配するというのだ。路地裏の貸し台所は、多くの人でごった返している。患者の家族がそこで、近くの市場で食材を仕込み、火を使い、食事を作り、患者のもとへと運んでいく。 肉団子のスープや、煮込みとうふ、フナの料理などなど。 卵巣がんの娘のために、野菜スープを作る母親は涙を流して娘の話を語る。「生きて欲しい」と 父親を看病するために、仕事を辞め、毎日通う青年。 車椅子のお婆さんは、娘と共に台所に現れ、自らが料理を始めた。聞けば、お婆さんは入退院を繰り返しており、家族は仕事で、看病につけないので、娘がひとり、学校を辞め、付き添っている。しかし、娘には料理が作れないので、お婆さんは、料理を教えながら、自ら料理を作っているわけだ。 お婆さんの後ろでは、娘が涙ぐんでいた。 きっと、日本では、そんな、環境はありえないだろうが、死の淵にある親子というものの強いつながりを、深く感じてしまう番組だった。 生きるということは食べるということ。たくましく、そして、思いやりにあふれた貸し台所、今日も、食事時には、たくさんの人で、ごった返している。